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BOTちゃん

先日の話の続き。

朝、Aは眼を覚ました。

リビングに行くとそこは父、母、妹がいた。

父「おはよう、A」

A「んー」

母「ちゃんと挨拶しなさい、A」

妹「おくれちゃうー」


一見どこにでもある家族。だけどこの家族は"きぐるみ"を着た仮想家族であった。
そして家族の中身はさまざまで、同じ性別、違う性別、同世代、異世代、果ては人工知能などもあった。しかし端から見た限り、中の人がどうなっているか等わからなかった。

近年仮想社会での家族内不和が増加。育児放棄家庭内暴力、不倫などが頻繁に起き、仮想家族からも居場所を消す人たちが大量に発生した。「家族」の希薄化を恐れた政府は人工知能による家族の補完を提案、家族から消えた人たちの"きぐるみ"を着て家族として暮らしているのである。

Aには恋人が存在し、ついにAと恋人は夜を共にすることにした。

Aはきぐるみ越しの感触に飽き足らず、ついに恋人のきぐるみまではがしてしまった。

そこには何もなかった。なんと恋人はコンピュータで動作する人工知能プログラムだったのである。


ここまでなら、手塚治虫星新一が想像した世界であり、「アイシテル」と言い続けるロボットが現れ、人々は飽き始めたであろう。

しかしAにとって、その方がむしろ好都合であったのである。

人々は疑い、気持ちを隠し、感情をすり減らしていった。そして「おはよう」「ありがとう」「大好き」と言った言葉が出なくなる、もしくは上辺だけで発言し気持ちは逆を向いている、ということがあった。そして人は弱っていった。いいやもしくは昔の人たちよりも弱くなっただけかもしれない。逃げる場所があるのだから。

そんな中の一人であるAも、裏切られたりすることのない*1、汚い部分が少ない*2、単純に自分を見てくれる人工知能プログラムを愛した。

とある日。

父「おはよう、A」

A「んー」

母「ちゃんと挨拶しなさい、A」

妹「おくれちゃうー」

そこには先日と同じようにAが存在した。

でも・・

A「おはよう、ちょっと紹介したい子がいるんだ」

*1:プログラムされていないから当然である

*2:プログラムにより生成可能、例:"ツン"気分